本コラムについて
対象テーマ: デリバティブ
対象読者層: 投資中級者〜
実用レベル: 普通
このコラムが向いている方
デリバティブ(主に先物やオプション)について基礎的な概念を学びたい方
インデックス投資や現物保有株のリスクを抑えるための合理的な手法を知りたい方
金融マーケットに対する知識を増やしたい方
本記事は筆者の個人的な見解であり、投資行動を推奨するものではありません。が、筆者が5年以上にわたって市場と向き合い、学び、実践している経験をもとに得られた知恵を詰め込んでいるため、新たな発見に繋がることがあると思います。さらに学びたい方は無料会員登録をしていただくとモチベに繋がります。随所に差し込まれている小ネタは学術的な要素が強いため、読み飛ばしていただいても趣旨の理解に支障はありません。
はじめに
株価が将来いくらになっているかは誰にも分かりませんが、将来いくらで買うか or 売るかを事前に定めておくことは可能です。
これは先物取引と呼ばれており、江戸時代の日本で誕生し、今となっては世界の金融マーケットに欠かせない仕組みとなりました。
今回のコラムでは「先物」、次回以降の記事ではそこから派生した「オプション」について具体例を用いて解説し、その魅力を伝えられればと思います。
直感的な理解
先物取引を直感的に理解するために、まずは以下の文章をハナコさんの立場になったつもりで読み進めてください。
ハナコさんは、先日ジュエリーショップでステキなダイヤモンドリングを見つけ、来年こそはボーナスが入ったら買おうと心に決めました。

価格は10万円だったので、日ごろの生活から比べるとちょっと奮発です。
ただし、宝飾の原材料となるプラチナやゴールドの価格は常に変動していますから、宝飾店のきらびやかなジュエリーも原材料の貴金属の相場に影響されて、値上がりしたり値下がりしたりします。
ハナコさんは、プラチナダイヤモンドリングを買う決心をしたものの、1年後の価格が気がかりです。現在の10万円であれば買えますが、来年になってこれ以上値上がりしたら諦めざるを得なくなります。

そこで本日、ジュエリーショップに行って来年プラチナダイヤモンドリングを買う予約をすることにしました。
デポジットとして10,000円を支払っておけば、来年のボーナスでプラチナダイヤモンドリングを購入できます。
このとき価格は10万円と決めてしまうので、値上がりするかもしれないという心配はなくなります。
もちろん宝飾店のオーナーが来年はジュエリーが値下がりするかもしれないと考えていれば、この予約を受けるでしょう。
オーナーにとっても宝飾品の価格変動は心配の種であり、1年後に値下がりしても10万円で買い取ってくれる人を事前に確保したいわけです。

これで双方の目的は達成です。ただ、1年後の店頭価格がどうなっているかも気になりますね。
<パターン1>値上がり
ハナコさんが心配していた通り、プラチナダイヤモンドリングの価格は12万円に値上がりしていました。でも予約していたから大丈夫。10万円で購入できます。
デポジットとして預けていた10,000円に90,000円を追加で支払い、12万円の商品を獲得できるため2万円分お得になります。
<パターン2>値下がり
ハナコさんの予想に反し、ジュエリーは値下がりして8万円になってしまいました。
8万円の商品であっても、デポジットとして預けていた10,000円に90,000円を追加で支払って購入する予約をしているため、実質20,000円の損失となります。
一方でオーナーはジュエリーが値下がりしたものの、本来なら80,000円でしか売れなかったはずの商品が10万円で買い取ってもらえたため、下落ダメージを緩和できたことになります。
先物取引とは
いかがでしたでしょうか?実はこのエピソードこそが先物取引そのものです。
先物取引は予約購入(もしくは売却)と根本的には同じであり、今回であれば買い手がハナコさん、売り手がオーナーです。
ではそのまま一般論に移りましょう。
日本国内において最も取引されている先物は日経平均株価を対象とした取引です。
例えば現在の日経平均株価が15,000円で、3ヶ月後に15,000円以上になると思えば先物取引において買う約束をすればいいわけです。

仮に満期日の3ヶ月後に日経平均株価が16,000円であれば、市場価格16,000円のものを15,000円で購入して即座に売れるため、1,000円の利益になります。
逆に14,000円であれば1,000円の損失になります。
なお実際の取引においては、日経平均株価に10倍・100倍・1000倍のいずれかを掛けた金額で取引がなされます。
例えば個人投資家でも扱いやすい「日経225マイクロ先物」などは、日経平均株価の10倍の金額で取引されるため、日経平均株価が50,000円であれば500,000円分のポジションを最低単位として取引することになります。
先物取引の意義
ここまでの話で、以下のような疑問を持った方もいると思います。
「事前に現物で日経平均株価のETFもしくは投資信託を買っていれば、先物を買うのと同じ結果になるんじゃないの?」
これは認識の通りで、現物でも先物でも満期までの値動きはほとんど同じであり、損益もほぼ一致します。
「先物と現物はどこまで値動きが一致するのか?」
先物取引は一定期間経過した後に決済されるため、現物価格に先物取引の開始から決算までの期間の金利収入分を加える必要があります。また、現物を保有している時のように配当金は受け取れないため、これを差し引く必要があります。近似的な計算式は「先物価格≒現物価格ー配当金 +金利」となります。
では先物取引を使う意義はなんなのでしょうか?
①資金効率
ハナコさんのエピソードではデポジットを用いて予約をしていました。
これは現実の取引においても同様で、例えば500,000円分の日経平均株価のポジションを取るために現物であれば50万円分まるっと必要ですが、先物であれば4万円弱で済みます。
仮に50万円の手持ち資金があれば、4万円支払うだけで日経平均株価を50万円分買った時と同じ損益を得ることができ、残りの46万円は定期預金や国債に預けて金利収入を得るなどといった立ち回りが可能となります。
この観点から先物は、保有資産の範囲内でレバレッジをかけて資金効率を高める道具として活用が可能です。
②現物のヘッジ
予期できない経済ショック(戦争やパンデミックなど)が起きた際には、決算内容や企業業績に何も問題がない企業であっても売られる傾向があります。そこで保有株を売らずに先物を使用して下落ダメージを軽減するという手法が取られる場合があります。
具体的には保有株を持ち続けると同時に、日経平均やTOPIXの株価指数先物を売り建てします。
特に、現物株を買い込むのに現金をほとんど使い切ってしまっている時などは、先物を使えば少ない資金でもそれなりの売りポジションを持つことができるため、十分下落リスクをヘッジできます。
この観点から先物は、予期せぬイベントから現物株の下落リスクを少ない資金でヘッジするものとして活用が可能です。
「下落時の個別株 β」
株式市場において、特定の銘柄が市場全体の値動きに対してどれくらい敏感に反応するかを表す指標をベータ=βといいます。例えば日経平均株価が1%変動した時に2%変動する銘柄の βは2となります(指数である日経平均株価の βが1と定められています)。上昇相場の時、各個別銘柄のベータの相関は低いですが、下落相場時は面白いくらい順相関となる傾向があり、ほぼ全ての銘柄が下落します。そのため先物を売って一時的にヘッジするという取引には十分意義があります。
最後に
今回のコラムでは先物取引についての基礎中の基礎を解説いたしました。
日経平均株価に限らず、S&P500やNASDAQ100などの株価指数を対象とした先物取引も当然なされており、現代においては現物市場以上に影響力のあるマーケットとなっています。
さて、次回のデリバティブに関するコラムでは「オプション取引」の基礎を解説していきますので、興味ある方はぜひ無料会員登録をしてお待ちください。